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新英語教育研究会神奈川支部HP

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2001 佐野 正之さん

■5月春の1日研修会報告 参加者:26名
 2001年5月12日 フォーラム横浜 (ランドマークタワ13階)にて 
●講演:「アクション・リサーチのすすめ」
      佐野 正之さん(横浜国大)
 4月例会で事前学習をしてから臨んだ参加者も初めてお話を伺った参加者も、生徒と共に「英語学習という山に登るイメージ」が描けたように思います。
(1) 方針
●アクション・リサーチの方法:まず「登る山」を設定(リスニング/スピーキング/
 英検合格/大学受験など)。生徒を信頼しつつ、目標を設定し直し進んでいく。

(2) 方法
(a) 目標を暫定的に決める:高望みをしない
・例)センター試験を目標にした場合:いきなりセンター試験の問題をしてもダメ。
 今生徒の実態がどこにあるのかを知って、中間的ゴールを決める。
(b) 実態を調査する:学級と社会(教師と保護者・学校)
(c) ルートを探る:
 「基礎」の視点:マズローの三角形を参考に、2の欲求を満たす
 1.生理的欲求:リズム感(緊張とリラックス) 
   例)孫の写真を見せてくつろいだ雰囲気を作る(?佐野先生って、お茶目ですね)
   例)廊下のペンキ塗りと廊下の掃除(?まずは学習の環境作りですね)
 2.安全の欲求:何をやっているか学習者が分かる 
 3.所属の欲求:「さあ、頑張っていこう」という先生の気持ち。仲間意識。
 4.尊敬の欲求:いい点数とりたい。認められたい。
 5.自己実現(表現)の欲求
 ・1.~3.がグラグラしていて4.5.から入ることも出来るが、要注意。 

 「基本」の視点:エリスの統合モデルを参考に
 1.input:興味が持てる内容でinteractiveな形で 
 2.生徒の積極性 
 3.語彙指導:継続的取り組み。知らない単語は5%以下に押さえてあるか
 4.文法指導:豊富な例文/段階的な口頭練習/書く練習で定着
 5.自動化のための練習:音読/look-up reading/shadowing/dictationノ
 6.言語を使用する機会:現実的に使用機会を与える
  重要度は、2>3>1>4>5>6の順。

(d) 仮説の設定:「基礎」「基本」は相互に関連。ステップを踏んだ中間目標+評価。
(e) 実践
(f) 結果の省察:判断するまでには最低で3週間が基本。成功すれば次の段階へ。
  失敗すれば仮説を修正。
(g) 結果の発表: 共感的な態度で聞き、相互の意見交換の場と考えることが大切。


(3) 質疑応答
《参加者》Q:アクション・リサーチへの反発は?
《佐野氏》A:現場の先生が主体的に行っている。一方的に押しかけていってもダメ。

(4) 参考文献
●佐野正之・奥山竜一「研究のまとめ」(『英語教育』大修館書店 98.11)
●佐野正之『アクションリサーチのすすめ』大修館書店
■レポーターの感想
 □ 私はこのところアクション・リサーチのタイトルで全国で講演していますが、聴講者の多くの方が、事前に講義の内容を勉強してきていただいて、かなりの理解ができた人たちに話したのは始めてでした。それだけに、短い時間でしたが、内容の充実した会になったのではないかと喜んでいます。ただ、これは一回の事前勉強会のせいだけではないかもしれません。もともと、アクション・リサーチと新英研の発想には次の点で大きな共通項があります。
1)実際の目の前の生徒に、なにが必要なのか、生徒を大切にし、教室を中心にした考え方があること。
2)英語の授業をただ単に英語の技術を教える場とだけは捉えずに、より広い視野で、生徒の人間としての成長に寄与することが大切だと考えること。
 このことは、今回の講演での質疑を通じてだけでなく、発表やその後の懇親会の場などでも強く感じたことでした。生徒を大切にして、前向きに授業に取り組む先生方の姿勢に感銘を受けました。会のますますのご発展を祈っております。

■参加者から出された感想
・前回の例会で事前勉強会をしましたが、今回ビデオを見ることでより具体的に分かりました。私はまだ1年目なので、急にいろいろなことをするのは不可能ですが、まず生徒たちのニーズをとらえ、少しずつでも生徒が楽しみ、主体的になれるような授業を心がけたいと思います。
・授業に直結した内容でもっと詳しくお話を聞きたいと思いました。ライティングの指導について学びたいです。昨年Nコンの映像部門の作品で県代表に選ばれた「revolution」という題の映像(ビーカーの中の実験)と音のビデオを見せて、感じたことを何でもいいから英語で書こう!!という活動をしたのですが、セカンドドラフトへ発展できず、the firstドラフトをクラスで共有して終わってしまった。
・アクションリサーチの精神とは離れてしまうが、教師が絞ったリスニングポイントを聞き取らせることよりも、ポイントを絞らずに聞き取った単語をどんどん挙げさせる手法が興味深かった。
・かねてから興味を持っていた内容であり、しかも具体的な実践例を踏まえての構成で、大変参考になりました。ありがとうございました。
・熱心な授業計画をされている他の学校の先生のお話をうかがい、良い刺激を受けました。
・どこからアクションを取り入れてもよいが、充分手当をする(基礎の欠けている所を)ということが大事ですよね。どういうアクションを取り入れるかという点もあるでしょう…。
・私のやっている授業に欠けているもの、「練習」のやりかたがいくつか紹介されて、興味深かった。本を読んで、やれるものは実践しないと、生徒に支持される先生にはなれないとヒシヒシと感じています。
・佐野先生の講演は初めてだったので、大変新鮮な思いで聞かせていただきました。学ぶことが多く、質問者とのやりとりの中で示唆を得ることが多く、有益でした。
・もっと具体的なお話が伺いたかった気がします。アクションリサーチとは、どういうものなのか、どう利用するかについては、ハンドアウトに沿って、わかりやすかったが…。
・「安全の欲求=わかるということ」「仮説の正当性の判断には少なくとも3週間かかる」など、勉強になりました。アクションリサーチについては批判的に聞くのではなく、共感的に聞く、みんなで考える、というところがとても共感できました。
・久しぶりに講演会を聞き、大変参考になりました。ありがとうございました。マンネリ化した授業を少し活性化できるような気がします。
・学校現場での具体的な授業づくりがたいへんよくわかりました。基礎、基本とは何か、教えるときのHop→Step→Jumpで、Jumpを目指すための前段階の大切さ、いろいろなことを考えながら拝聴しました。今、選択授業で中2を教えていますが、基礎、基本の定着(補充)について、ALTと共にその生徒生徒に合わせての教材づくりを行い、実践し始めたのですが、今日お聞きした内容は目標達成を考える上でとてもヒントになりました。ありがとうございました。
・中学校、高校、大学、それぞれの差を配慮されての説明が参考になった。チェックポイントなど、丁寧に述べられたので、参考にしたいと思う。


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